前回は、僕自身が「可能性を解放する」ことが大事だなと気付いた体験についてお話しさせていただきました。
今度はその「可能性を解放する」ために、どうして「ポカポカ」「イロイロ」なのかについて、またまた僕自身の体験からで恐縮ですが、お話させていただけたらと思います。

僕は、特別支援学校で4年間勤めた後、学校の中だけではなく、もっと子どもたちの将来や社会を見据えて教育を考え直してみたいと思い、障害のある大人の方へ就職支援をする就労移行支援事業所に転職しました。

就労移行支援事業所では、何かの診断を受けていて、就職に困っている方が、履歴書添削や面接練習など一般的な就職活動はもちろん、まず安定して出勤するための生活リズム作りだったり、ビジネスマナーや対人関係スキルを高める訓練だったり、実際にいろんな職場を見学・体験してみて働くイメージ作ったりをされています。

そこで利用者のみなさんからよく聞いたのは、「自分が何ができるか分からない」「自分が何をしたいのか分からない」という言葉でした。

「障害があるから」働くことに困っているというそんな単純なではなく、障害があることよってさまざまな辛い体験をされていたり、逆にさまざまな体験の機会を得られなかったりすることで、働くための「自信」や「意欲」を失ってしまって働くことに困っている方が多いんだという現実を知りました。
そして、就労移行支援事業所は「障害を克服してもらう」のではなく、その失ってしまった「自信と意欲を取り戻してもらう」という役割が大きかったように思います。

その就労移行支援事業所で、たくさんの方が自信と意欲を取り戻し、ようやく就職を勝ち取り、そして社会に出て活躍されていく姿を見ることができました。
長年引きこもり家族以外の人とはほとんど話さなかったところからちょっとずつ人と話してみるうちに不安や心配が消えていき得意な作業の仕事に就かれた方、エンジニアとしてバリバリ働かれていたのに介護の職場実習を体験してみて本当は人と直接関わって喜んでもらうことが好きなんだと気付いて介護職に就かれた方。

本当に、人は思いもよらないことがきっかけで、思いもよらない変化が起きるものなんだなということを知りたくさん驚きました。

そういった変化に共通して感じたのは、支援者がああしろこうしろと言って外から起きるものではなく(むしろそれは逆効果になりやすかったなと反省することがたくさん…)、ご本人自身の内から起こるものだということです。
「自分が何ができるか分からない」「何をしたいのか分からない」と言っていた方でも、ほんのちょっとでも自分からやってみようかなと思えるものというのというのは必ずあって、それが見つかって、ほんのちょっとでもやってみたからこそ起こったんじゃないかなと思います。

そうやって「ほんのちょっとやってみる」ことで、ちょっとずつ自分にもできることがあるということが分かってきて「自信」を、そして、ちょっとずつ今度はこういうこともやってみたいという気持ちが湧いてきて「意欲」を取り戻していかれたように思います。

そこで支援者として本当に大事だなと思ったのは、障害を克服するための指導や指摘でもなく、これをやってみたらいいあれをしてみたらいいといった助言や意見でもなくて、「ほんのちょっとやってみる」ができるような環境や関係を築くことでした。

「ほんのちょっとやってみる」ができるように、まず「やってみようかな」と思える選択肢をとにかくたくさん揃えて選べるようにしておくこと、そしてどんなことでも「やってみていいんだ」と思えるよういつも安心安全に感じてもらうことが、周りの人ができる最低限だけど最大限のことだなと思います。

そして、その最低限だけど最大限のサポートを、子どもの頃から受けてもらえるようにすることこそが大人の役割で、「可能性を解放する」教育につながると考え、unicoに参加しました。
つまり、まず「やってみようかな」と思える選択肢をとにかくたくさん揃えて選べるようにしておくことこそが「イロイロ」で、どんなことでも「やってみていいんだ」と思えるよういつも安心安全に感じてもらうことこそが「ポカポカ」なのです。

また、「ほんのちょっとやってみる」は「可能性」と言い換えることができます。
unicoは「子どもたちの可能性を解放する」というミッションを掲げていますが、この「可能性」は突出した特別な才能のようなものを指すのではなく、今は小さいけれどもいくらでも大きくなっていく「ほんのちょっとやってみる」のことです。
その本来だれもが持っている「可能性」を邪魔せず制限せず、最大限に解放するためのメソッドが、「ポカポカ」と「イロイロ」ということなのです。

今まさに、このメソッドが、ただの僕ひとりだけの経験に基づくものにならないよう、さまざまな専門家の方や顧問の先生方のご支持やご意見を受けて、進化し続けています。