ドアが開き、プレイルームで遊ぶ子どもたちの声が聞こえてきます。少し緊張した面持ちで入室してきたのは、「unico 古賀」の作業療法士にして、2022年4月に入社したばかりの新卒社員、森直輝さん。ピンと背筋を伸ばして座る森さんに、作業療法士を目指したきっかけ、そして「unico」を選んでくれた想いをお聞きしました。

作業療法士になろうと思ったのはきっかけがあったのでしょうか?

中学1年生のとき、病気が原因で、両足が動かなくなったことがあったんです。診断にも時間がかかって不安も大きかったんですけど、そのときにサポートしてくれた作業療法士の方がとても素敵な方でした。

実際に歩く練習とか、リハビリの支援はもちろんなんですけど、何より心の支えになってくれて。そのときの僕は不安で暗い気持ちになっていて、最初はその方に対しても距離を置こうとしていたんです。でもその方は「大丈夫だよ」「治っていくよ」と何度も声をかけてくれて。がんばる意欲を0から1にしてくれたように思います。

それは本当に、人生が変わった経験でした。例えば「疾患だからデイケアに行きましょうね」と単純に形式的に言ってしまうこともできるのですが、その方は未来のために予防として筋肉をつけたほうがいいと親身にサポートしてくれました。

だから僕も、その子が明るい方向に進めるように心の支えになって、何か制限があるのなら、その制限をできる限り解放してあげて、「その子にもっと可能性のある選択肢を選ばせてあげたい」って。それまでは医療関係の仕事なんて全く考えてなかったんですが、そこから作業療法士をめざすようになりました。

「子どもたちの将来の選択肢を広げたい」という想いがあったんですね。

就職活動も、その想いを軸に探していました。作業療法士の専門学校だと、やはり就職先は総合病院などの医療機関がメインで、そもそも療育関連の求人票自体がほとんどありません。

ただ、総合病院で実習を重ねるなかで、自分のやりたい支援はここでは難しいかもしれないと考えるようになりました。病院の小児支援では、脳性麻痺など重度の病気のお子さんが多いので、どうしても身体の機能維持など、病気のケアが中心になります。それはもちろん必要なことなのですが、なかなか病院では、その子ひとりひとりとの対話やコミュニケーションに時間を割くことが難しいなと。

そうして「子どもたちとしっかり関わりたい」という想いを軸に、少しずつ療育分野を考え始めました。そんなとき、学校の求人票の中に「unico」を見つけたんです。ホームページを見て、実際に見学に行ってみると、「子どもたちの将来の選択肢を広げたい」という僕の志と、unicoの掲げる「子どもたちの可能性を解放する」というミッションが、まさに一致していると思いました。同時に「作業療法士として、もっと支援の幅を広げられるんじゃないか」とも。それでunicoに入社を決めました。

実際に入社してみてどうでしたか?

作業療法士としてチームの支援の幅を広げることができる、というのは実感しています。例えば、unicoメソッドの「ポカポカ(コーチング)」の「質問」や「イロイロ(ティーチング)」の「提示(選択肢を示す)」のスキルにも、やはり専門的な目線が入ってこそ、その子の状態への発見や見立てを広げることができると思うんです。

チーム全体にそういう視点を広げていけるように、自分の気づきや見立てはスタッフみんなに共有するようにしています。お互いに自分の考えや意見を言い合ってしっかりすり合わせていく雰囲気があるので、それもunicoのいい文化の一つかなと思います。

でも、専門的な視点にこだわりすぎて、その子の「やりたい」を抑えてしまっては意味がありません。作業療法士としての専門性を発揮しつつ、どうすれば、子どもたちの「やりたい」をもっと活性化していけるのか?というのは、今自分が試行錯誤しているポイントでもありますね。

めざしていた支援を少しずつ実践できているのですね。

とはいっても、入社したての頃は、子どもたちとどう接したらいいのかわからず戸惑いもありました。自分の一言一言でその子の考え方も変わるかもしれないし、心を傷つけてしまうかもしれない。そう考えると、どう関わっていいのかわからなくなってしまって。

でも、同じ教室のスタッフの先輩が、いつも明るく、子どもたちと対等に接しているのを隣で見ているうちに、「まずは、自分が子どもたちと対等になるところから始めよう」と思いました。どんどん子どもたちのことを知っていこうと。

最初は反応が薄かった子どもたちも、一緒に体を動かしたりワークショップをしたりするうちに、だんだんとその子の環境の認識の中に自分という存在が入ってきたみたいです。最近やっと「この子と対等になれたのかもしれない」「心を開いてくれてるんだな」と思えるようになってきました。

チームの先輩に学んでいるのですね。

支援に困ったり悩んだりするときは、まずは先輩に相談してみるようにしています。

例えば、イライラして癇癪を起こしやすいお子さんがいて、傾聴しようと思っても同調することしかできなくて「森先生にには何もわからんやろ!」と言われてしまったことがありました。話を聞けても、一緒に迷子になってしまうというか。

他には、こっちの子は「〇〇がしたい!」、別の子は「△△がしたい!」と言っているときに、折り合えるようにと中立案を出したのですが、どちらの子も100%やりたいことが得られず両者をモヤモヤさせてしまったり。

そういうときは、その子と親しく関わっている先輩や支援に詳しい先輩にまずは相談してみて、そのアドバイスを実践してみるようにしています。もちろん、その子と支援員との関係性もあるので、毎回アドバイス通りに完璧にうまくいくわけではありませんが、そのおかげで、支援に足踏みせずに、今の状態からちょっとずつ前に進むことができているように思います。

これからやってみたいことはありますか?

先ほども話しましたが、作業療法士の専門性を踏まえたunicoの支援をもっと分厚くしていきたい、深めていきたいなと思っています。それがきっと、僕の志である「その子の将来の選択肢を広げる」ことにもつながるかなって。

例えば今もひとり、背中の低緊張で姿勢保持が難しいお子さんがいます。その子の担当をさせてもらって、机や椅子の高さ、その時の注意力の持続時間、その環境の情報、姿勢や身体の向き等を注意深く観察して、座り方や使う椅子などを工夫するようにしています。

療育に興味のあるセラピストの卵、後輩学生に向けてメッセージをください。

療育に興味がある方には「作業療法士をがんばる」という考えではなく、「子どもが好き」という想いを軸に職場を見てもらった方がいいかなと思います。そこからプラスで、作業療法などの専門性を手段として捉えてほしいです。

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、一般的な個別療法で想像するような一対一の支援が必ずしもできるとは限りません。作業療法は目的ではなくて支援の手段の一つです。まずは「子どもが好き」というのが根っこにあって、そこプラスの能力として、PTやOT、STといった専門性を発揮してほしいと思います。そうすることで初めて、子どもたちとしっかり向き合うことができるんだと思うんです。

そういう意味でもまずは「子どもが大好き」という人と一緒に働きたいです。子どもが大好きで、いろんな個性や背景、能力のある人が、ひとりひとりその人らしい支援をしてもらうことで、もっと子どもたちの将来の選択肢も広がっていくんじゃないかなと思います。

▼プロフィール

森 直輝(もり なおき) 。作業療法士。
2022年新卒入社。「児童発達支援・放課後等デイサービスunico古賀」に配属。
好きなものは演劇や野球。趣味は美味しそうな食べ物をネットで調べること。

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